スパイス・イズ・ナイス

スパイス・イズ・ナイス

アリエル・ジョンソン博士の言葉

撮影:ディッテ・イサガー

フレーバー化学者のアリエル・ジョンソン博士が再び登場し、なぜ私たちは痛くてもスパイスを経験するのが好きなのかについて教えてくれる。 

風味を生み出す生物の視点から風味を見るのは、興味深い訓練である。

例えば、ベリー類にとって甘味はエネルギー源であり、種を撒く動物に与える報酬である。乳酸菌にとって酸味は、二酸化炭素が吐き出されるのと同じように発生する抗菌性廃棄物である。バラの豊かで深いベースノート?植物にとっては、ビタミンAを再利用して作られる花粉媒介者へのシグナルなのだ。

一方、スパイシーは身を守るためのものであり、宇宙的なジョークのようなものだ。説明しよう。

あなたがトウガラシ属の植物だと想像してほしい。すべての植物がそうであるように、逃げたり動き回ったりする必要のない(文字通り、その場に根を張っているのだから)身を守る方法を探している。もしあなたがサボテンなら、物理的なトゲを発達させるように進化するだろう。もしあなたがウルシなら、皮膚を傷つける樹脂を作る方法を見つけ出すだろう。

唐辛子は創造力を発揮し、この2つの戦略を組み合わせ、カプサイシンと呼ばれる分子を作り出した。唐辛子は他の植物と同様、再利用とリサイクルを好み、大量に生産する化学物質を、ゼロから始めるのではなく、新しい分子に切り詰めたり、飾ったり、混ぜ合わせたりする。よく知られたトリックのひとつは、アミノ酸(タンパク質の構成要素)をキニーネ、ニコチン、モルヒネ、DMT、そしてカプサイシンなどのアルカロイドに変えることだ。

 

チリ人は究極のやり手であり、痛み反応を巧妙に引き起こすことに長けているがゆえに、人間心理の別の側面を見落としていた。

 

危険と痛みは私たちの神経系を興奮させ、時にはまったく恐ろしいことが本当に本当にエキサイティングになる。ジェットコースターに乗ったり、スカイダイビングに出かけたりするのもそのためである。

ペッパーの致命的な欠点とでも言おうか。自分を食べようとする者を阻止するためにあれだけの努力をしたのに、その防御が逆に目まいを起こさせ、快感を与え、中毒性さえ持たせてしまうのだ。

人類は現在、植物界が自力で作り出したであろうピーマンの数をはるかに上回る数のピーマンを栽培している。それだけ私たちはピーマンの実を食べたいのだ。