酢は台所の柱であり、あまりにどこにでもある身近なものなので、多くの人は酢が発酵の産物だとは思っていない。実際、酢は偏性好気性細菌(機能するために空気を必要とする細菌)の大家族によってアルコールが酢酸に発酵することによって作られる。これらの酢酸菌(AAB)にはさまざまな種類がある。彼らは空気中に遍在し、あなたを含むほとんどの生物の表面に存在する。

コンブチャと同様、ビネガーは酵母とバクテリアの共同作業の産物である。まず酵母が糖をアルコールに変換し、次にAABがアルコールを酢酸に変換する。違いは、ビネガー製造者はアルコールに対する一定の最大閾値を持つ酵母を選択することが多いことで、つまり酵母はベース液中の糖分を消費し尽くす前に死滅する。(あるいは、酵母を死滅させるためにアルコールを加熱することもある)そうでなければ、多くの酵母は酢酸に耐えることができず、AABに引き継がれると死んでしまう。このように、コンブチャが利用可能なすべての糖がアルコール(およびそれに続く酸)に変換されるまで、継続的にますます酸性に成長するのに対し、酢は一定の酸度でプラトーになる。  

世界中のビネガーの種類は、ビネガーを生産する文化と同じくらい多様であり、多くの場合、その地域固有のアルコール度数を反映している。東洋から西洋まで、米、ソルガム、キビ、大麦、キウイ、リンゴ、蜂蜜、ベリー、ココナッツなどから発酵させたビネガーを見つけることができる。これらの製品のほとんどに含まれる発酵可能な糖類はすぐに利用できるため、酵母はすぐに仕事を始めることができる。米や大麦のような穀物では、まず酵素が穀物中のデンプンを発酵可能な糖に分解しなければならない。  

最古のビネガーは、すでにアルコール発酵していた製品に由来するもので、それもほぼ間違いなく偶然の産物だった。微生物学が登場する以前は、アルコールが酢になる理由は謎だった。太陽が昇り、沈むのと同じように、ワインも野外に放置すれば酢になる。その原因は誰にも想像がつかなかった。  

しかし、人々が発酵のプロセスに馴染みがなかったというわけではない。人類が文明を築いてきた間、人々は果実から酒を造ってきた。イランでは、ザグロス山脈近くの新石器時代の住居の台所だった場所から発掘された紀元前6000年前の骨壷の破片に、ワインの黄赤色の染みが見られる。それから数千年後、古代エジプト人は独自のアルコール入りブドウ酒を製造していた。紀元前3000年頃には、エジプトの王たちがワインの入った壺を墓に埋葬していたという証拠がある。考古学者がこれらの壺を調べたところ、酢の残留物も発見された。  

プトレマイオス朝時代のエジプトのパピルス『アンクシェションクの訓戒』には、ワインの保存方法について 「ワインは開けない限り熟成する」と記されている。それから2千年後、ビネガーが解明されたのは、単なる料理上の飛躍にとどまらず、私たちが自然を理解する方法を根底から覆すものだった。  

18世紀半ばまで、地球上のすべてのものは火、水、土、空気という4つの基本要素から構成されているというのが一般的な常識だった。近代化学の創始者の一人であるアントワーヌ・ラヴォアジエは、空気が純粋で不変の物質ではなく、むしろ酸素(彼は「酸の元」を意味するギリシャ語から造語した)を含む成分の組み合わせであることを示唆した最初の人物であった。彼は、硫黄やリンなどの非金属を使った厳密な実験を通して、元素を燃焼させると周囲の空気から酸素が取り除かれることを正しく推論した。その反応生成物は酸であった。これらの結果を外挿することで、ラヴォアジエは、ワインが酢に変化するのは、AABによって行われた「酸化」のプロセスを通じて、空気中の酸素が原因であるという結論に達した。  

この認識の飛躍はヨーロッパ全土に広がり、酸化のアイデアを利用したビネガー製造の進歩につながった。ビネガー製造業者は、ワインの表面積を増やすことによって、そのプロセスをスピードアップすることができた。ドイツのビネガー製造者は、新鮮な空気を吹き込むと同時に、緩く詰めた木片を通してワインを滴下する「クイック・プロセス」を開発した。数百年経った今でも、職人たちはこの方法を採用している。

画像2、3提供:エヴァン・ソン

カボチャ節

石坂脩以

シュイは、旧INUAで研究開発部門の共同責任者として私たちのチームと一緒に働いた経験があり、私たちのポップアップ期間中は、ノマ京都の厨房でスーシェフとして働きました。彼は現在、「海の野菜」で日本の海藻の世界を探求する陣頭指揮を執っている。

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アリエル・ジョンソン博士による

アリエル・ジョンソン博士は、Noma Projectsのサイエンス・ディレクターを務めています。フレーバー化学の博士号を持つアリエルは、nomaの研究開発チームの主要メンバーであり、オリジナルの発酵ラボの設立に携わりました。今年初めにNoma Projectsのチームに復帰する前は、MITメディアラボでの仕事を含め、多くのエキサイティングなプロジェクトに携わってきた。

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Flavor Notes

マキシマムウマミ?

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Flavor Notes

京都からのトラベルレター

by Kevin Jeung. 

nomaとNoma Projectsの研究・生産部門のシェフを務め、ほとんどの時間を発酵ラボで過ごしている。noma京都のポップアップでは、3ヶ月間京都を中心に活動し、新しい食材や生産方法を研究した。

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